華鬼灯 -ハナホオズキ-

鬼 /〈華〉

〝鬼〟という存在【本文抜粋】

 この世界には、人間以外にもうひとつ、別な種族が存在する。
 それが鬼──ある時を境に、突然現れた奇異なる種族。
 鬼と言っても、見た目は普通の人間である。
 髪色や目の色が、人間ではあり得ない蒼や朱だったりする者もいれば、人間と同じ黒髪黒目の者もいる。
 そんな彼ら鬼たちが持つ、様々な属性を操る不思議な力。
 その力を以て、彼らは鬼の姿へと変化へんげするのである。
 故に、鬼は人間ヒトの姿と鬼の姿、ふたつの姿を持つ。
 そして彼らは、その力のことをはなと呼んだ。

   ───「其ノ弐 ── 陽光在レバ陰影モ在リ」の本文より抜粋

鬼と人間の違い

人間は老い、衰えゆくが、鬼は不老長寿。
約百年は軽く生きることができると言われ、その死の間際まで若々しい姿のままだと言う。
鬼の身体的成長が止まる(体力、精神力等絶好期を迎える)のは生後二十年くらいだと言われており、散華さんかのときが訪れれば、鬼の力は衰える(扱えなくなる)が、人間のように体力が衰えたりすることはないのだとか。

また、一般的に黒髪黒目であることが人間の特徴であるため、髪や瞳の色が様々であることも鬼の特徴である。

さらに、鬼は人間が持ちえない妖気を持ち、それが鬼の力である〈華〉の源となっている。
鬼の姿に変化できたり、焔や水などの妖術を扱えるのは、その〈華〉の力に依るものだと言われている。

鬼の生まれ方

親のどちらか一方が鬼である場合、子供は必ず鬼として生まれる。
しかし、鬼が現れ始めて以降、人間同士の親からも鬼として生まれる子もいた。
その原因は未だ分かっていない。

〉とは

〈華〉とは鬼の力のことを指し、〈華〉の状態は〈蕾華らいか〉、〈開華かいか〉、〈散華さんか〉の順に変化する。
鬼である者は誰しもこの変化を経験することになる。
※〈華〉の状態については後述

〈華〉という名称や各段階の名称は、初代桜の鬼によって命名されたものと言われている。
「鬼」という認識が広まったのも彼が発端となっているらしい。
命名される以前の鬼やその力は、「ヒトが突然変異で進化した化け物、特異能力」と認識されていた。

なお、〈華〉の見た目は八重咲きの芍薬に似ているのだとか。
花言葉は「恥じらい」「はにかみ」。
この〈華〉は現世うつしよで生まれた鬼のみを対象とした鬼の力の呼称であり、隠世かくりよから来た存在である〈六華將〉は〈華〉ではなく鬼灯ほおずきを持つとされている。

蕾華〉、〈開華〉、〈散華

◆〈蕾華らいか
 蕾の状態の〈華〉、即ち鬼の力が扱えるようになる前の状態のこと。
 鬼は誰しもこの状態で生まれ、成長するとともに自然と〈開華〉、鬼の力を扱えるようになる。


◆〈開華かいか
 〈華〉が開いている状態、即ち鬼の力が扱える状態のこと。
 鬼は一生をほぼこの状態で過ごす。
 〈開華〉する時期は人によって様々であるが、多くは生後五年〜十年で〈開華〉する。
 稀に十年以上経っても〈開華〉しないことがあり、その要因は〈華〉即ち鬼の力の強さが影響しているのではないかと考えられている。
※早く〈開華〉したからといって弱いわけではない。


◆〈散華さんか
 〈華〉が散った状態、即ち鬼の力が消え、扱えなくなる状態のこと。
 〈開華〉から〈散華〉への推移は緩やかなものだが、一般的には散り始め(〈散華〉初期)から約一年後には完全に〈散華〉の状態になる(個人差あり)。

▼〈散華〉には、初期、中期、後期の三段階が存在する。
*初期:変化へんげできるが、その時間が徐々に短くなる(本来ならば制限無しで変化できる)
*中期:変化ができなくなるが、妖術を扱うことや武器の現出は可能
*後期:変化ができず、妖術も扱えなくなるが、鬼の力の一つである武器の現出のみは可能

狂華〉と〈ない〉

狂華きょうか〉とは〈蕾華〉の時期に、何らかの原因で鬼の力が暴走してしまうこと。
くるき〉とも呼ばれる。
暴走を止めるには〈華〉の宿し主が力を制御する必要があるが、そもそも制御できていれば暴走することはないため、
〈狂華〉に陥ったが最後、宿し主を殺すことでしか抑える術がない。

稀に宿し主が死を免れることがあるものの、〈狂華〉に陥った〈華〉は二度と〈開華〉しない。
その状況を〈ぞこない〉と云う。
子元はこの〈咲き損ない〉になったが故に、数年間、鬼としての自身の立場に悩まされていた。

〝気〟と呼ばれるもの

〟とは、〈華〉の属性のことを指す。
一般的に、鬼の妖術は陰陽いんよう五行ごぎょうに基づいて、七種類の気に分けられる。

陰陽は陰と陽、五行はもくごんすいのことであり、
鬼の妖術はこれらに基づき、闇、光、風、火、地、天、水の七種類に分類されている。
まずは、陰陽のいんから闇が、そしてようから光が創り出される。
よって、陰の気を持つ鬼は闇を操り、陽の気を持つ鬼は光を操る、という形になる。
五行ごぎょうも同様であり、分かりやすくまとめると…

 ◇もくの気=風属性/雷属性
 ◇の気=火属性
 ◇の気=地属性
 ◇ごんの気=天属性
 ◇すいの気=水属性/氷属性
 ◇ようの気=光属性
 ◇いんの気=闇属性  となる。

水の気については、上記の通り氷属性も含む。
また、他の気に比べ、ごんの気即ち天属性は分かりやすい特徴がない。
よって、陰、陽、火、水、木、土のいずれにも属さないものを金と捉えることもあるらしい。
〝気〟と属性の関係については、「陰陽五行と鬼の妖気」の項目で解説している。

なお、「雷属性」については例外が存在しており、雷属性を有した鬼が水の気・氷属性を操っていたことから、氷から転じて生まれる可能性があるとも考えられている。

鬼の武器

鬼は己が扱う武器を自由に呼び出すことができる。
一般的には太刀が多いが、中には槍や弓、薙刀を持つ鬼もいるため、全ての鬼が太刀を持つ訳ではない。

それらの武器は、内なる〈華〉に収納されているような状態。
故に鬼は、戦時であっても基本的に武器を携帯する必要がない。
呼び出せる武器は〈華〉が創り出したものであるため、〈華〉の色が刃の色に反映されているのだとか。